歯科衛生士ブログ
歯周病について
・歯周病とは
細菌の感染により引き起こされる炎症性の疾患です。
主な原因は、口腔清掃不良によるものです。歯と歯肉の間(歯肉溝)の清掃が疎かになり、歯垢(プラーク)がたまり、プラーク中の多くの細菌により炎症を起こして、歯肉溝が深くなり歯周ポケットが形成され、歯肉が赤く腫れてしまいます。
それに加えて、喫煙、歯列不正、遺伝、糖尿病、不適合補綴物(被せものに隙間がある)などが歯周病を進行させる因子になります。
・歯周病の進行と症状
健康な歯肉:歯肉は薄いピンク色で歯肉に弾力があり引き締まっているため出血はないです。
歯肉炎:歯肉は赤色で歯と歯の間の歯肉が膨らんでいて、ブラッシングで出血があります。
歯周炎:歯肉は赤紫色でさらに腫れ、食べ物などが詰まります。歯肉が下がり、骨が溶けます。
軽度(P1):骨吸収は歯根の長さの3分の1以下で、歯周ポケットは3~5㎜です。
中度(P2):骨吸収は歯根の長さの3分の1~2分の1で、歯周ポケットは4~7㎜です。また、軽度の根分岐部病変(歯の根っこの分かれ目の病変)があり、歯の動揺は軽度です。
高度(P3):骨吸収は歯根の長さの3分の2以上で、歯周ポケット6㎜以上です。また、高度の根分岐部病変があり、高度の歯の動揺もあります。
このように歯周病は、初期は特に痛みを感じることが少ないため、知らず知らずのうちに進行して気が付いたころには、歯を支えている骨が溶けて歯が動ようになり、最悪の場合は抜けてしまうこともある恐ろしい病気です。
歯周病菌は女性ホルモンが大好物?
歯茎に炎症をもたらす歯周病菌は、歯垢や食べカスをエサに生きていそうなものですよね。実際、食べものに含まれるタンパク質などを栄養源として、お口の中で繁殖します。ただ、歯周病菌の中には「女性ホルモン」が大好物なものも存在しています。
▼エストロゲンを食べて繁殖する細菌
お口の中にはたくさんの細菌が生息していますが、P.intermedia(プレボテラ・インターメディア)と歯周病菌の一種は、女性ホルモンである「エストロゲン」を大好物としています。体から作られる物質を栄養源とするなんて意外ですよね。
▼妊婦さんは「妊娠性歯肉炎」に要注意!
妊娠中の女性では、エストロゲンの分泌量が10~30倍にまで増加します。これは女性ホルモンを大好物としている歯周病菌にとっては、繁殖する上で最高の環境といえます。それを踏まえると、「妊娠性歯肉炎」という特別な病気が存在している理由もよくわかるかと思います。
それだけに、妊娠中の女性は妊娠前よりもオーラルケアに力を入れる必要があります。
むし歯にならない人がいるって本当?
皆さんは、歯磨きをあまりしなくても、むし歯にならない人がいるのをご存知でしょうか?
歯磨きをしないと、お口の中が不潔になってむし歯になるのが普通ですよね。ご飯を食べたあとや眠る前に、しっかり歯磨きするよう教えられるのはそのためです。それにもかかわらず、むし歯にならない人がいるのはなぜだと思いますか?
お口の中にむし歯菌がいない
私たちのお口の中には、数百種類の細菌が存在していて、その中にむし歯菌も含まれています。むし歯菌の多くは、子どもの歯が生え始めるころに住み始めるのですが、この頃、しっかりとした予防管理を行った人は、それ以降もむし歯菌にかかりにくくなることがわかっています。つまり、歯磨きしなくてもむし歯にならない人は、そもそもお口の中にむし歯菌が存在していないか、その数がとても少ないかのどちらかなのです。
歯周病にはかかるので要注意
むし歯にかかりにくい人は、歯磨きがおろそかになる傾向があります。一生懸命歯を磨かなくても、むし歯にならないからですね。けれども、歯周病やその他の病気のかかりやすさは、普通の人と同じであることから注意が必要といえます。 つまり、どんな人でも毎日の歯磨きはしっかり行うことが大切なのです!
歯周病が肺炎を引き起こす?
歯周病の症状といえば、歯茎の腫れや出血ですよね。歯周病菌が歯茎に炎症を引き起こして、歯茎や顎の骨を壊していく病気です。それが重症化すると、日本人の死因第5位(2018年)に位置する肺炎を引き起こすことがあります。厳密には「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」のリスクが高まります。
誤嚥性肺炎ってなに?
誤嚥とは、唾液や食べ物などを誤って気管に飲み込んでしまう現象で、それによって生じる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。飲み込む力が衰えた高齢の方に起こりやすい病気です。
歯周病との関係は?
歯周病を放置すると、お口の中で細菌が繁殖します。それらが唾液などに付着して、気管や肺に入り込むことで、細菌感染が起こります。つまり、誤嚥性肺炎ですね。これは病気や加齢によって免疫力が低下した人には、とても深刻な病態となることから、歯医者さんも十分に注意するよう促しています。
歯周病は決して放置せず、できるだけ早く治療を受けるようにしましょう!
⻭ぎしりについて
⻭ぎしりについて家族や知人に⻭ぎしりを指摘されたことはありませんか?
⻭ぎしりは、寝ている時に限らず、無意識のうちに行われます。自覚していない人も多いかもしれません。今回は、⻭や顎だけでなく睡眠にまで影響を与えるこの⻭ぎしりについて、ご説明します。
⻭ぎしりはなぜ起こる?
実は、⻭ぎしりの原因はまだ解明されていません。かつては⻭並びやかみ合わせの悪さが原因とされていました。しかし、現在はストレスも原因のひとつだと言われることが多いです。
⻭ぎしりの種類
⻭ぎしりは、その特徴によって3つに分類されます。クレンチングは音がせず気付きにくいため、注意が必要です。
1.グライディング
上下の⻭をギリギリとすり合わせます。
2.タッピング
上下の⻭をカチカチと噛み合わせます。
3.クレンチング
上下の⻭を強く噛み合わせます。食いしばり等があてはまります。
⻭ぎしりによる悪影響
⻭ぎしりは私たちに様々な悪影響を与えます。
1.⻭や⻭肉に負担をかける
⻭がすり減ったり、⻭周病の進行を加速したりしてしまうことがあります。インプラントの場合は、外れたり、破損したりしてしまうことがあります。
2.顎関節症(がくかんせつしょう)の原因になる
通常の食事より大きな力が顎関節にかかるため、顎関節症を引き起こす場合があります。
3.肩こりや睡眠不足になる
強く噛む力は肩にまで影響を及ぼすため、肩こりの原因になります。また、睡眠の妨げにもなります。
診断と治療について
周囲の人に指摘されたことがあるか?等の問診や、⻭のすり減り具合から診断します。治療方法としては、生活習慣の改善やスプリント療法等が挙げられます。
スプリント療法とは
ゴムやプラスチックでできたマウスピースを装着することで、⻭にかかる負担を軽減したり、噛み合わせのずれを治したりする治療法です。⻭ぎしりは単なる癖ではなく、身体に悪影響を与えるものです。気になる場合は⻭科医にご相談ください。
認知症と歯周病について
高齢化社会と認知症
高齢化社会の日本。高齢に伴う「介護」はとても大きな問題ですよね。現在、介護が必要となる一番の原因は「認知症」となっています。それでは、認知症にならない、進行させないためにどのようなことをすればいいのでしょうか?
⻭がないと脳が小さくなる!?
認知症には、様々な種類があります。現在日本で一番多いのが「アルツハイマー型認知症」です。アルツハイマー型認知症の発症には、脳の中の神経伝達物質の減少が大きく関わっていると考えられています。その神経伝達物質は、「噛むこと」により刺激が脳に伝わることで増加します。過去の研究で、アルツハイマー型認知症の人は健康な人よりも⻭の本数が少なく、そして残存する⻭が少なくなればなるほど、脳の萎縮が進んでいたということが報告されています!!
⻭がなくなる原因、⻭周病
先ほど、⻭がなくなると脳の萎縮が進むという話をしましたが、日本において⻭がなくなる二大原因は「むし⻭」と「⻭周病」と言われています。⻭周病とは、⻭と⻭ぐきの間に繁殖する細菌に感染し、⻭の周りに炎症が起こる病気です。この病気の恐ろしいところは、はじめはほぼ自覚症状がないまま進行するところです。
それでは、どのようにして防げばいいのでしょうか??
大切なことは、「気づくこと」です。
⻭周病セルフチェック
□ 朝起きたとき、口の中がネバネバする
□ ブラッシング時に出血する
□ 口臭が気になる
□ ⻭肉が赤く腫れている
□ かたい物が噛みにくい
□ ⻭が⻑くなったような気がする
□ 前⻭が出っ⻭になったり、⻭と⻭の間に隙間が出てきた
皆さん、いくつ当てはまりましたか?
3つ当てはまると、油断禁物。⻭医者さんで予防するように努めましょう。
6つ当てはまると、⻭周病が進行している可能性があります。
全て当てはまる人は、かなり⻭周病が進行しています。
⻭を大切に⻑生きしよう!
認知症と⻭の関係は、今も研究が進められています。⻭を大切にすることは、将来の自分を大切にすることに繋がります!
美味しい物を自分の⻭で噛んで、健康で⻑生きしたいですね。
キーンとした歯の痛み
キーンとした痛みの原因
夏になると、冷たい飲み物は欠かせません。よく冷えた飲み物を飲んだとき、キーンと⻭がしみて、痛くなることはありませんか?それは知覚過敏かもしれません。知覚過敏とは、⻭の神経が過敏になり、ちょっとした温度変化を痛みと感じてしまう状態のことです。一度なってしまうと、意外と治りにくい疾患です。季節の変わり目や、温度変化の激しい気候になると増えてきます。
知覚過敏の症状
今までなんでもなかったのに、冷たいものを口に含むと一部分だけ数秒間しみて痛い。しかし、再度続けて冷たいものを含んでも最初ほどはしみない。知覚過敏になると、このような症状が現れます。ひどい時は、口に風を感じただけでしみてしまう事もあります。
知覚過敏の原因
ほとんどの場合、刺激を痛みと判断する基準が下がっていることが原因です。つまり、弱い刺激でも痛いと勘違いしてしまうということです。これは激しい気候変動や季節の変わり目、ストレスなどによって引き起こされます。また、強いブラッシングが原因になることもあります。⻭を磨くときに力を入れすぎると、⻭と⻭肉の間のエナメル質が薄くなってしまうのです。
知覚過敏の治療法
残念ながら特効薬はありませんが、例えば以下のような方法で治療を行います。
薬や樹脂でコーティングする
しみる部分を薬や樹脂でコーティングする方法があります。効果には個人差があり、その場で良くなる方は半数くらいです。
知覚過敏用の⻭磨き粉を使う
⻭を傷つけにくい、専用の⻭磨き粉があります。
かみ合わせを調整する
咬み合わせのバランスが悪く、⻭に負担がかかって知覚過敏になることもあります。その場合は、かみ合わせの調整が効果的です。