歯科衛生士ブログ
「鎌倉殿」の死因は「歯が悪かったから」?
実は諸説ある、頼朝の死因
現在放送中のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。
タイトルの通り、鎌倉幕府成立前後を舞台としたドラマで、主要人物の一人に源頼朝がいます。
皆さんもご存知の通り、源頼朝は源氏の棟梁。
1192年には後鳥羽天皇によって征夷大将軍に任ぜられ、鎌倉幕府を開きました。
頼朝の最期は、1198年に落馬した後、体調を崩し、翌年の1月に死亡しました。
亡くなったのは満51歳の時でした。
実は、この死因については、未だにはっきりしていません。
落馬の際に負った傷から破傷風(はしょうふう)にかかった、あるいは脳卒中を起こしたなど、様々な説があります。
数ある死因の中の一つに、「頼朝の歯が悪かったため、死に至ったのではないか」という説があります。
どういうことかというと、落馬して怪我を負った頼朝は、一旦回復したものの、療養中に水を飲んだ際、口の中の細菌が水と一緒に肺に入ってしまい、肺炎を起こしたというのです。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも描かれている通り、権力抗争のために多くの一族を粛清してきた頼朝。
そのストレスが虫歯や歯周病を悪化させ、死に至ったという見方もできるかもしれません。
もし、頼朝が適切な歯科治療を受けられていたら、ひょっとしたら、日本の歴史は変わっていたかもしれませんね。
虫歯にならない? 「キシリトール」って何?
ガムなどに配合されている「キシリトール」。
砂糖の代わりに使われる甘味料らしいけど、実際どういうものなの?
本当に虫歯にならないの? など、気になりますよね。
今回は、知ってるようで知らないキシリトールのヒミツをご紹介します。
「キシリトール」ってなに?
キシリトールは「糖アルコール」という甘味炭水化物の仲間。
自然な果実や野菜にも含まれていて、例えば、乾燥イチゴには100g中に約300mgのキシリトールが含まれています。
私たちがガムやお菓子として口にするキシリトールは、シラカバやカシなどの木から抽出される「キシランヘミセルロース」を原料にして、工業的に作られたもの。
日本では1997年に食品添加物として認可されて以来、色々なお菓子や飲み物に使われています。
「キシリトール」がむし歯の原因にならない理由
キシリトールを始めとする糖アルコールからは、口の中で歯を溶かすほどの酸は作られません。
また、甘味によって唾液が出やすくなります。
口の中で酸を作らないこと。
そして、唾液を出して酸を中和することが、キシリトールがむし歯の原因にならない理由なのです。
しかも、キシリトールは一定期間以上口の中に入れていると、むし歯の原因となる歯垢が付きにくくなります。
さらに歯の再石灰化を促し、歯を固くします。
加えて、キシリトールは虫歯の大きな原因であるミュータンス菌の活動を弱める働きも持っているのだとか。
そう聞くと、「じゃあ、キシリトールのガムやお菓子さえ食べていれば、歯磨きしなくても虫歯にならないんだ!」と思うかもしれませんが、そうではありません。
キシリトールは歯垢を剥がしやすくするため、ブラッシング効果を上げます。
でも、ブラッシングを全くしなければ、歯垢は歯に止まり、歯石になってしまいます。
毎日きちんと歯磨きをして、歯医者さんでの定期検診も受ける。
その上で、キシリトールが配合されたガムやタブレットを使えば、効果があります。
キシリトールの効果をきちんと理解して、上手に使いこなしましょうね!
実は「あの人」も、歯が悪かった?
苦しみから生まれた作品も
虫歯や歯周病で歯が痛い…というのは、現代人ならではの悩みではなく、昔の人たちも、同じように歯の痛みで苦しんでいたようです。
「奥の細道」で有名な松尾芭蕉は、41〜44歳頃にこんな作品を残しています。
水を手ですくって飲もうとしたら、その冷たさが歯にしみる…という内容の俳句です。
これを読むと、どうも歯周病の疑いあり、と言えそうです。
さらに、48歳の頃にはこんな俳句も作っているのだそうです。
海苔(のり)を食べていたら、混じっていた砂を噛んでしまい、歯が痛くて衰えを感じる…という内容の作品。
芭蕉さん、歯のお手入れをサボっていたのかな…と思いますが、江戸時代の人の骨を調査してみると、ほとんどの人が歳をとるにつれて、ほぼ全ての歯がなくなってしまっているのだそうです。
その原因は、歯周病だと見られています。
ちなみに、同じく江戸時代を代表する俳人である小林一茶も
と、歯が抜けてしまって「なむあみだぶつ」と唱えたら「あもなみだ」になってしまうという作品を作っています。
皆さんは、歳をとっても自分の歯が使えるように、今からちゃーんとお手入れを続けましょうね。
どうして永久歯の前に乳歯が生えてくるの?
皆さんはもう、おとなの歯に生え替わりましたか?
子どもの歯のことを「乳歯」、おとなの歯のことを「永久歯」と呼びますが、どうして、最初から永久歯が生えてこないのでしょう?
「乳歯」と「永久歯」ってなに?
子どもの歯「乳歯」は、生後6か月から8か月にかけて、下の中央から生えてきます。
それから徐々に生え揃っていき、人それぞれに差はありますが、2歳半〜3歳くらいになると、全ての乳歯が揃ってきます。
その後、6歳前後になると、永久歯が生えてくるようになります。
永久歯の歯並びがそろうのは、9〜12歳くらいにかけて。人によっては、20歳を過ぎてから奥歯に「親知らず」が生えることもあります。
やっぱり、わざわざ「乳歯」が生えてから「永久歯」が生えてくるなんてめんどくさい!
すぐに永久歯が生えてくればいいのに…と思う人もいるかもしれませんが、それには、実は理由があるんです。
まず「乳歯」が生えてくる理由
人間はみんな、生まれてすぐは赤ちゃんです。
母乳や粉ミルクを飲んで成長します。
この頃は、歯は必要ありません。
1歳頃になると、ミルクだけでは栄養が足りなくなり、もっと栄養価が高い「食べ物」を食べる必要が出てきます。
そのため、食べ物を噛んで、細かくするための「歯」が必要になるのです。
ところが、おとなの歯である永久歯は硬く、できあがるまでに5年以上の時間がかかります。
そのため、まずは小さめで、エナメル質や象牙質の厚みが永久歯の半分で、すぐに使える乳歯が先に生えてくるのです。
この乳歯を使って、子ども時代はご飯を噛んだり、細かくしたりするのです。
それから、ようやく丈夫な永久歯に生え替わりが進み、さらにおとなのアゴの大きさと筋肉の強さに適した永久歯の歯並びが完成するのだそうです。
ちなみに、乳歯も永久歯も、生えたばかりは弱く、虫歯になりやすいのだとか。
永久歯が生えたら、ていねいに歯みがきして、長く使えるようにしましょうね。
歯みがき後のうがいは「1回」がオススメ?
虫歯予防の効果に大きな違いが!?
虫歯にならないために、皆さん毎日歯をみがいているはず。
では、歯みがきした後、何回うがいをしていますか?
実は、歯みがき後のうがいの回数が、虫歯予防に大きく関係するかもしれません。
虫歯は「ミュータンス菌」、いわゆる虫歯菌が糖を食べて酸を作り、その酸が歯の成分であるハイドロキシアパタイトを溶かすことによって起こります。
これを「脱灰(だっかい)」といいます。
しかし、初期の虫歯では、唾液に含まれるリン酸イオンやカルシウムイオンが歯のエナメル質層に浸透し、溶けて失われた部分に補充され、歯を元の健康状態に戻す「再石灰化」が起こります。
フッ化物を含むハイドロキシアパタイトは再石灰化を起こしやすく、しかも、いったん歯に戻ると脱灰しにくくなる。
言い換えると、歯の表面が虫歯に強くなっていくのです。
そのため、虫歯予防にはフッ素入りの歯みがき剤(ペースト、粉など)が良いと言われているのです。
ところが、歯みがきの後に何回もうがいをすると、歯みがき剤に含まれるフッ化物が流れて薄くなってしまいます。
ですから、歯磨き後の仕上げのうがいはごく少量の水で1回だけにする。
加えて、しばらく飲食しない。
こうすることで、再石灰化効果が高まると言われています。
知っておきたい「親知らず」のケア方法
あなたには「親知らず」ありますか?
大人の皆さんの中には、親知らずがちょっとした悩みのタネ…という方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、「親知らずって何?」から、「親知らずのケアの方法」まで、ご紹介していきましょう。
なぜ、親知らずはトラブルの原因になりやすい?
そもそも「親知らず」とは何か?
「親知らず」とは、正確には第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)のこと。
永久歯の一番奥、前から数えて8番目に生える歯です。
一般に生えてくるのが17歳〜21歳頃。
つまり親の手を離れた頃に生えることから「親知らず」や「智歯」と呼ばれます。
しかも、必ず生えてくるものではなく、個人差があります。
しかも、生え方によっては、お口のトラブルの原因にもなりやすい歯でもあります。
「この間、親知らずを抜いたんだよ」なんていう会話がよく交わされるように、親知らずは抜歯の対象になりやすい歯です。
それは、生え方に問題があることが多いからです。
一つは、傾斜して生えるケース。
親知らずが生えるスペースが足りないと、斜めや横向きに生えてきて、隣の第二大臼歯を圧迫してしまいます。
こうなると汚れもたまりやすく、歯みがきも困難。
とうぜん、隣の歯にも虫歯が発生しやすくなります。
もう一つは、「水平埋伏(すいへいまいふく)」といって、親知らずが顎の中で横向きになったまま、生えてこない状態です。
こうなると、隣の歯の根を刺激して、歯の根やまわりの骨を溶かしてしまうことがあります。
毎日のケアが肝心!
「確かに、ちょっと斜めに生えてきてるけど、何ともないから大丈夫〜」と油断するのは禁物。
親知らずは口の一番奥に生える上に、正常に生えてこないことも多々あります。
そのため、歯みがきが十分にできず、虫歯や歯周病の原因になりやすいのです。
虫歯や歯周病の原因にしないためにも、毎日のお手入れが肝心。
歯ブラシで磨く時には、歯ブラシを斜め横から入れ、親知らずに毛先をきちんと当てます。
そして、小さめに口を開け、小さく動かして磨きましょう。
口を大きく開けると、ほっぺたが引っ張られて歯ブラシを入れにくくなります。
親知らずだけでなく、その手前の歯の後ろ側も、しっかり磨きましょう。
歯間をきれいに磨くには、毛束が1つの、ヘッドが小さな歯ブラシ「タフトブラシ」を使うのもオススメです。
そして、もし親知らずが痛んだり、腫れたりした時には、すぐ歯医者さんに診てもらうようにしましょうね。
もう一度知っておきたい「歯みがきの基本」
どうして歯を磨くの?
なぜ、歯をみがかなければいけないのか。
それは、歯に付着した生きた細菌の集まり「プラーク」を取り除くためです。
プラークは歯と同じような乳白色をしているため、注意してみがかないと、残ってしまいます。
しかも、プラークは水に溶けにくく、うがいしただけでは取り除くことができません。
歯にプラークが付いたままにしておくと、虫歯や歯周病の原因になります。
だから、歯みがきが大切なのです。
プラークが付きやすいのは「歯と歯の間」、「歯と歯肉の境目」、「かみ合わせの面」など。
これらの部位に、歯ブラシの毛先が届くように意識しましょう。
歯をみがく時には、歯ブラシの毛先を歯面(歯と歯肉の境目や、歯と歯の間)にきちんと当て、毛先が広がらない程度の軽い力でブラッシングします。
動かし方は、小刻みに。5〜10ミリ程度動かして、歯を1〜2本ずつみがくイメージで動かしましょう。
歯ブラシの持ち方には、しっかりにぎる持ち方(パームグリップ)と、えんぴつを持つような持ち方(ペングリップ)とがあります。
みがく場所に合わせて、持ちやすい持ち方でみがきましょう。
もし、歯をみがく時に力が入りすぎてしまう場合には、えんぴつを持つような持ち方で、毛先が広がらない程度の力加減を意識してみましょう。
歯みがきは、力を入れ過ぎず、小刻みにていねいに。
特に寝ている間は口の中の唾液(だえき)が少なくなり、ふだんよりも口の中をきれいにする力が落ちます。
だから、寝る前にはしっかり歯をみがいて、きれいな状態で寝るようにしましょうね。